はじめてデモやパレードに参加される方へ ~デモ・パレードの参加心得~
今年の夏は、暑い中、国会前や全国各地で、安保法案に反対する抗議デモやパレードが多数行われていますね。
これまで政治活動とは無縁だった方も、今回の法案だけは「このまま放ってはおけない」と、デモやパレードへの参加を検討しておられるのではないでしょうか。
この国の主権は国民にあります。国会議員を選ぶのは国民ですから、政権はいつも世論を気にしています。
だから、国会の議論がおかしいと思ったら、国民ひとりひとりが、「おかしい」と声をあげることが大事です。
おかしいと思うことを「おかしい」という権利は、憲法21条1項で保障されています。
日本国憲法21条1項
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
おかしいと思うことを「おかしい」という手段はいくつもあります。
なかでもデモやパレードは、単なる意見の発信にとどまらず、共通する思いをもつ人々が、実際に出会い、場所と時を共にして声をあわせるというリアルな体験を伴う点で特別なものです。
デモやパレードにいくと、「こんなにもたくさん自分と同じ考えの人がいるんだ」と勇気づけられますし、ゲストスピーカーをはじめいろいろな人の意見や情報を聴くことで、大いに刺激も受けます。多くの人と思いを共有できると、連帯感も生まれるでしょう。
また、たくさんの人が、プラカードをかかげ、声をあわせて一つの訴えをすることは、周囲の人にも強い印象を与えます。
もちろん、政権へのアピール力も大きなものがあるでしょう。
そんな意義深いデモやパレードに、はじめて参加しようとしておられる方のために、知っておいていただきたいことを以下にまとめました。ぜひ参考にしてください。
◆まずは、熱中症にご注意ください◆
とにかく暑い季節ですので、帽子や日傘を忘れずにご参加ください。プラカードを持つ場合には、日傘は少し不自由かもしれませんね。
また、飲み物もご用意いただき、適宜水分補給をしてくださいね。日焼け止めもお忘れなく。
◆デモ・パレードにはルールがあります◆
公共の場所や公道を利用しますので、あらかじめルートや時間帯が決まっています。
各地方自治体の公安条例に基づき、一定のルールに従うことが求められますので、主催者からの説明をしっかり聞いて、守るようにしてください。
また、主催者が、持ち込むプラカードの内容や団体の旗の持ち込み等に制限を設けている場合もあります。TwitterやFacebookなどで予め告知をしている場合も多いようですので、確認してみてください。
なお、プラカードは、主催者が貸出用を準備している場合もありますが、基本的には参加者が持参することが多いようです。インターネット上で、主催者自らが提供している場合もありますし、いろいろなデザインのものがTwitterやFacebookで拡散されていますから、好きなものをコンビニ等で簡単にプリントして作ることができます。ものによっては、ネットプリントで印刷することもできるようです。
もちろん手ぶらでもよいでしょう。
不明点があれば、ぜひ主催者に連絡をとってみてください。
◆安全の確保に努めてください!◆
デモやパレードには大勢の人が参加しますし、公共の道路の一角を歩いて交差点も渡ります。
誘導する警察官やスタッフの指示をよく聴いて、一般の方の通行を妨げることのないようにしてください。
また、隊列の安全のため、各隊列の前後や左右をバナー(横断幕)で囲う、できるだけ男性が隊列の外側を歩く、お子様連れの方はお子様にできるだけ内側を歩かせるなど、周囲の参加者と協力して、安全の確保に努めてください。
なお、大変残念なことに、パレード中に、沿道から飛び出した第三者から悪質な暴行がなされた事例が報告されています。
そのようなことを防止するため、弁護士が見守り隊として参加したり、何かあったときの証拠化のために撮影係を隊列ごとに複数もうけるなどの対策がとられています。
心配な方は、主催者にどのような安全対策がとられるか確認してみましょう。
念のため、もしものときの対応も知っておきましょう。
万が一、暴言や暴行等、危害を加えようとする人がいたら、大きな声を出して周囲の参加者やスタッフに助けを求めてください。
近くに警察官がいれば速やかに伝えましょう。
撮影係は、加害者の顔や車両のナンバープレートなど、加害者を特定できる情報を撮影するのが有効です。
写真や動画はたくさんあった方がいいですし、今はどの携帯やスマホでも性能のいいカメラが搭載されていますので、撮影に協力できる人はぜひ撮影してください。
脅迫に至る暴言や身体に対する暴行は明らかな犯罪です。
犯罪者は、顔を写されることを嫌がりますから、デモやパレードに参加する人が加害者を特定するための撮影に協力する意識を高めることは、違法行為の抑止になります。
万一被害を受けてしまったら、近くのスタッフに必ず伝え、その場に警察官を呼んで報告してください。
そして、近くの警察署に出向いてすぐに被害届を提出しましょう。
◆警察官の役目は,公共の安全と秩序の維持です◆
デモやパレードには大勢の人が集まりますし、公共の道路も利用します。
そのため、安全確保や交通整理のために、たくさんの警察官が出動します。
お祭りやマラソン大会のときにもたくさん出動されていますが、それと同じことです。
警察法2条では、警察の職務について次のように定めています。
警察法2条(警察の責務)
1 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。
このように、警察の活動は、不偏不党かつ公平中正を旨としますので、もちろんですが、「表現の自由」や「集会の自由」に干渉することはできません。
たとえば、デモやパレード中に、沿道の方へのビラまきが行われることがありますが、これも表現の自由として適法な行為ですから、安全になされているかぎり、制限することはできません。
また、警察は、原則として、裁判所の令状なしに、デモやパレードの様子等を写真撮影することができません。
私たちは、憲法13条により、個人の私生活上の自由の一つとして、本人の承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由(「肖像権」と呼ばれることもあります)を有しているからです。
例外的に警察の撮影が許されることもありますが、それは次の1~3までの全てを満たした場合だけであることが最高裁判所の判例で確認されています。
1 現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合で
2 証拠保全の必要性および緊急性があり
3 その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるとき
(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁:京都府学連事件)
したがって、デモやパレードが平穏に行われているかぎり、撮影する理由にはなりません。
もし警察が写真撮影をしているのを見つけたら、何のために撮影しているか尋ね、上記の1~3の要件をみたすものでなければ、やめるよう伝えて下さい。
◆最後に告知です!◆
京都弁護士会でも、8月29日(土)午後2時から、円山公園音楽堂で集会&パレードを企画しています。
これだけ大規模な集会の企画はおそらく過去に例がありません。
もちろんどなたでも参加できます。ご家族やお知り合いとお誘いあわせのうえ、ぜひ多数ご参加ください!
「平和安全保障法制の今国会での成立NO! 緊急府民大集合」
※ 集会では、小林節慶應義塾大学名誉教授(衆議院憲法審査会で違憲と明言された3人の憲法学者のお一人)のご講演があります!
※ 集会後に円山公園音楽堂から京都市役所前までパレードします。プラカードや横断幕は主催者が用意します。
※ 当日は、日弁連の請願署名の受付も行います。ぜひご協力ください。
(弁護士 上瀧浩子、弁護士 古家野晶子)
※学生さんは、つぎの記事もあわせてご覧ください!
※いまが正念場!それぞれが自分にできることをしましょう!
※FacebookやTwitterでも活動中です!