【寄稿】とどめ刺された、安倍・高村氏の屁理屈~弁護士 出口治男
※出口治男弁護士から寄稿いただきました!
「安倍・高村両氏らは、砂川事件の最高裁判決を根拠に、安保法案は「合憲」と主張しているが、この見解についてどう考えるか?」
この問いに対し、山口繁・元最高裁長官は
「非常におかしな話だ。砂川判決で扱った旧日米安保条約は、武装を解除された日本は固有の自衛権を行使する有効な手段を持っていない、だから日本は米軍の駐留を希望するという屈辱的な内容です。日本には自衛権を行使する手段がそもそもないのだから、集団的自衛権の行使なんて全く問題になってない。砂川事件の判決が集団的自衛権の行使を意識して書かれたとは到底考えられません。」
と答えた。
9月3日の朝日新聞は山口氏の見解を報道している。
この報道は朝日のスクープだった。
共同通信は慌てて同日山口氏にインタヴューし、朝日と同様の内容の見解を確認して、4日に報道している。
自分達が推薦した憲法学者をはじめとする大多数の憲法学者、「内閣の良心」(山口氏の評価)と言われた内閣法制局の歴代長官が「安保法案は違憲」だと言った。
これに対し、官房長官は「合憲だと言っている憲法学者は一杯いる」と言い返し、たった3人の憲法学者の名前を「一杯」挙げた。
しかし、いくらなんでもこれでは旗色が悪すぎる。
で、自民党の諸公はなんと言ったか。
「憲法解釈の最高権威は最高裁で、憲法学者でも内閣法制局でもない」と子どもじみた反論をした。
さすがに元最高裁長官は、このような幼稚すぎるが、しかし日本の将来を危うくする時の権力をもてあそぶあまりにもデタラメな議論に、今回寸鉄人を刺し、とどめを刺した。
論調の背後に、火を噴くような怒りを僕は感じとる。
安倍・高村両氏の、目を覆い、耳をふさぎたくなる屁理屈については、僕も前からいろんなところ、機会に批判をしてきたが、憲法学者でもなく、法制局長官とも無縁な、元裁判官、元京都弁護士会会長、元日弁連副会長程度の肩書しかない一弁護士の批判は、「権威なき批判」として歯牙にもかからなかったようだ。
中味でなく、「権威」にすがりつこうとした安倍・高村屁理屈は、「権威」によってしたたかに打ちすえられ、とどめを刺された。
「合憲」の主張を、安倍・高村、自民党公明党、そして横畠内閣法制局長官諸公よ、もういい加減にしたらどうか。
今からでも遅くない。
子どもじみた理由で「合憲」を言い続けることをやめ、「違憲」論の軍門に降り、直ちに安保法案を撤回せよ、と言いたい。
特に自民党幹事長の谷垣氏、公明党委員長の山口氏に言いたい。
あなた方は弁護士でしょ。
ならば弁護士魂を取り戻せ、と。
法律家として、安倍・高村屁理屈を黙って見過している姿は、誠にみっともない。
どころか情なさすぎる。
安倍・高村屁理屈が公然とまかり通っている政権、与党は、法の良心を蹂躙している。
法律家の良心にかけて、この事態を正せ、と、怒りを込め、そして期待をも込めて僕は言いたい。
(弁護士 出口治男)