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【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

安保法制 理解のコツ~言葉づかいに惑わされない〜リアル・ウェブ学習会 実況版(その2)

ウェブ学習会

(安保法制、何だかわかりにくいなあって思っている人が多いと思うんです。そこで「理解のコツ」ですが、「言葉づかいに惑わされない」ということです。)

山下/「集団的自衛権」という言葉がありますが、大体どんなものとしてイメージされていますか?「集団だから、いいものとちがう?」と言った人がいるんですが。イメージ言える方。

 

受講者/個別的というのは、日本国の問題だったら自分のことを守る、集団的というのは、例えばアメリカのことも一緒に守るということではないかな。

 

山下/そうですね。正しいです。
  「個別的自衛権」は、自分の国が武力攻撃された時に、自分の国を防衛するために反撃する権利です。
  「集団的自衛権」は、「同盟国的自衛権」と言った方がわかりやすいので、置き換えていただくとよいです。今議論されている集団的自衛権は、要するに、「日米同盟国的自衛権」です。日本の国を守るためにアメリカの手を借りるという言い方をされるけれども、アメリカと一緒に、アメリカの戦争に行く、アメリカが攻められたら、自分の国は攻撃されてないけど、アメリカと仲の良い国が、アメリカといっしょに反撃していくということです。

 元々、「集団的自衛権」をいちばん最初に使ったのは、ソ連です。アフガニスタンの政権党は、ソ連が支援する共産主義政権で、アメリカやアラブ諸国は、パキスタン政府を通じて、政権党に反対する反政府イスラム教徒ゲリラを応援していたわけです。そこにはビンラディンとかもいた。政権党に対する反乱で、共産主義政権が維持できそうもなくなってきたときに、ソ連が軍事介入する口実に、「集団的自衛権」という言葉を使ったということです。そこから始まっているんです。自分の国の防衛のために、他の国の力を借りるというのでなくて、そういう発想のもの。そんなにいいものじゃないと思いますね。

 それから、「集団的自衛権」と「集団的安全保障」とどうちがうかよくわからない、という人もいます。
 「集団的安全保障」は、「国連的措置」で、これは、国連の安全保障理事会で、これは侵略だとして決議を出せば、国連加盟国で協力して、武力行使して反撃していいということです。
 「集団的安全保障(国連的措置)」の「集団」は、「国連加盟国全体」です。
 「集団的自衛権」の「集団」は、「同盟国」だけです。なので、同じ「集団」という言葉を使っているけど、意味は全然違います。


 但し、「国連的措置」というと、公正で中立的な感じに聞こえますが、1990年の湾岸戦争は、初めて国連が主導してイラクに空爆をしたということ、このあたりから、アメリカの意図する戦争のために国連が使われるようになってきている面があると思うので、注意が必要です。

 この区別については、東京外国語大学の平和構築講座の伊勢崎賢治先生が、詳しく書いて下さっています。(朝日新書「日本人は人を殺しに行くのか」)

 他にも、例えば「平和安全法制」というのか、「戦争法制」というのか、「国民保護」というのか、「国民動員法」というのか、いろいろ言葉はあります。


 昨年6月4日の衆議院の憲法審査会でも、議員から、こんな質問がありました。


 「集団的自衛権の定義がまちまちで、そのときそのときで使い分けしている。平和という言葉もそうですよね。法律の名前自体が欺瞞的な使い方をされている。言葉の定義がさまざまで、国民にとってますますわけがわからなくなってくる。同じ言葉を使いながら、意味していることが全く違うということをわかってもらわないと、議論が進まない状況になっている、言葉の定義を誰がどこで確実に制御していけるのかということも一つの鍵だと思うが、どう考えるか」

 これに対し、参考人の小林節先生は、次のように回答されました。
 「常識と非常識の問題だと思う。日本語の乱れというか、政治家がプライドがあったらこういう議論はしないだろうと思う。日本国の最高機関でこういう話し合いがされて、とても恥ずかしい。この原因は、やはり自民党側から議論をしかけたわけですから、言葉がくるくる動くようなのはおかしいと思う。つまり、戦後七十年間、少なくとも憲法9条の縛りで海外に軍隊は出せないできたものが集団的自衛権と後方支援という説明がつくなら出せることになるから、これは今までしたことのない国際法上の戦争に参加することになる以上、戦争法なんですね。でもそれが必要だと言うならそれでいけばいいのに、平和だ、安全だ、レッテル張りだ、失礼じゃないですかと言っている方が、私ははっきり言って失礼だと思います。そういうレベルの話だから、野党の方たちが明確に論争をしかけて、その異常さを国民に知らせてください。」

 こういうふうに区別して考えないといけないという話で、それが、安保法制を理解するコツです。
 
 これから、レジュメの(2)、民間人の組み入れについて見ていきますが、ここでも言葉の問題があります。
 安保法制というのは、日本の国土が武力侵略された時に「国民を保護」していくための法体系ではない。米軍に追随して自衛隊が海外に行く際に、日本の施設や物資をどういうふうに調達し、「国民をどう動員していくか」、その設計をした法律群だということを見ていく必要があるだろうということです。


                         (弁護士山下信子)