【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

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【寄稿】沖縄辺野古新基地反対と戦争法反対が連帯し、安倍内閣退陣を!~弁護士 岩佐 英夫

※岩佐英夫弁護士から寄稿いただきました!

沖縄辺野古新基地反対と戦争法反対が連帯し、安倍内閣退陣を! 

1、2015年7月16日、沖縄・辺野古新基地建設に関する「公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」は、本年1月からの13回にわたる委員会をふまえ「検証結果報告書」(以下、「報告」と略称)を発表、翁長知事に提出しました。7月24日、防衛省沖縄防衛局は県民世論を無視して、護岸計画書等を県に提出しました。

 2、沖縄の米軍基地は、これまでもヴェトナム戦争アフガニスタンイラク戦争などアメリカの侵略戦争の前進基地の役割をはたしてきました。辺野古新基地も、普天間基地の単なる「負担軽減・移設」では決してなく、いま国会で審議中の戦争法を支える新たな強大な侵略基地の建設です。

 3、本年8月4日、政府は突如、辺野古新基地工事の「1ヶ月間中断」を発表しました。

ⅰ、これは沖縄県民総ぐるみの「勝つまで諦めない」粘り強い運動、全国の市民の大きな連帯・支援の広がりにおされたものであることは明らかであり、大きな前進・勝利です。

ⅱ、同時にそれは、国立競技場建設計画見直しと同様、安倍内閣が少しでも支持率を挽回しようとする姑息な手法のひとつです。いま、国会審議中の戦争法案については、6月4日の衆院憲法審査会で3人の憲法学者自民党推薦も含めて全員が「憲法違反」と明言してから「潮目」が大きく変わり、「戦争法憲法違反!」「立憲主義・民主主義違反!」「日本をアメリカと一緒に戦争する国にするな!」という声が海鳴り・地鳴りのように全国津々浦々にひろがり、内閣支持率は遂に30%台に低下しています。

 4、翁長知事は、政府発表への対応として、この中断期間中は、埋立承認取消の手続は停止する旨表明しました。しかしながら、私たち運動する側は決して手を緩めてはならないと思います。こうした時期こそ、ますます運動を強め、辺野古新基地を断念するまで徹底的に追い詰めることが重要です。それが政府との協議に臨む翁長知事の立場を支え、強化するものだからです。

 5、私たちは今、早急に「報告」の内容を学ぶことが大切だと思います。

 「報告」は本文131頁、資料①ないし⑪からなり、仲井間前知事が行った埋立承認手続の瑕疵の有無について、公有水面埋立法(以下、「法」と略称)第4条1項各号の要件に即して詳細かつ厳密に検証していますが、そのごくポイントのみを紹介します。

 6、法は、都道府県知事は、第4条1項一号ないし六号の全てを満たさない限り埋立を免許してはならないと定めていますが、本件の具体的事情との関係では一号ないし三号が重要であり、以下、これに即して紹介します。

 7、一号:「国土利用上適正且合理的ナルコト」

ⅰ、この要件について「報告」は、まず、沖縄の米軍基地の歴史を検証しています。1945年4月に米軍が沖縄に上陸し占領開始した直後から、住民を収容所に隔離して基地建設をしたこと、講和条約発効(1952年)後は、「ヘーグ陸戦法規」を根拠とする法的根拠を失つたもとで、「銃剣とブルドーザーによる新規接収」を行う等して基地建設を進めた事実を指摘しています。県民は「プライス勧告(地代一括払い)」反対の島ぐるみ闘争、1995年の少女暴行事件に対して8万5千人の県民総決起大会等の運動を展開してきました。

ⅱ、こうした世論に対して1996年に「沖縄に関する特別行動委員会SACO」で普天間基地等の11施設の米軍基地返還等が合意されました。2009年9月の鳩山連立政権は当初「海外移設、最低でも県外移設」をかかげましたが、その後自民党政権復活となりました。こうした中でも2013年1月、沖縄の全市町村長及び議長の連名の「建白書」が「オスプレイ配備撤回」とともに「普天間基地を閉鎖・撤去し県内移設を断念すること」の要求を掲げ、安倍首相に提出しました。2014年に入ると、御記憶のように、1月には稲嶺名護市長の再選、9月名護市議会選挙で基地反対派が過半数当選、11月には翁長知事の当選、年末の総選挙では小選挙区の全てで基地反対候補者が当選し、辺野古基地反対は文字通り県民総ぐるみとなったのです。

ⅲ、しかるに、いまなお、日本の国土面積のわずか0.6%に過ぎない沖縄に在日米軍専用基地の73.8%が集中しています。陸地だけでなく、海・空にも米軍訓練区域が指定され日本の船舶・航空機の運行に支障をきたしています。「報告」は、こうした米軍基地の存在が、沖縄の振興開発の大きな障害となっていると指摘しています。

ⅳ、沖縄米軍の中心である「海兵隊」が「抑止力」であるという議論に対して、「報告」は森本敏防衛大臣が退任記者会見で「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地である」と述べたことを紹介し、「抑止力論」が根拠のないことを明らかにしています。

ⅴ、「報告」は、こうした検討をふまえ、「本件埋立により得られる利益」(「公共性」)と、「本件埋立により失われる利益」とを比較衡量して、総合的に判断した場合、上記一号の「国土利用上適正且合理的ナルコト」の要件を満たさないと結論づけています。

 8、二号 「其ノ埋立が環境保全及び災害防止ニツキ十分配慮セラレタルモノナルコト」

ⅰ、「報告」は、この要件について辺野古周辺の生態系の豊かさ、特にジュゴン、ウミガメ、サンゴ類、海草藻類、航空機騒音等について詳細な事実認定をしています。

ⅱ、特に、本件審査過程において前沖縄県知事は、2013年8月1日、名護市長及び県環境生活部長に対して、同年11月29日を期限とする意見照会を行い、期限内に両者から回答がなされました。環境生活部長の意見書は「生活環境及び自然環境の保全について懸念が払拭できない」旨指摘しました。 

ⅲ、2013年11月12日の仲井間前知事時代の沖縄県の審査状況に関する「中間報告書」において、前記一号及び二号要件について、沖縄県「環境生活部の見解を基に判断」としていました。

ⅳ、しかるに県は、環境生活部の意見を無視し、一号、二号要件ともに「適」としました。県は県環境生活部長の意見に基づき、事業者に4次にわたる質問をし回答を得ていましたが、この「回答」を環境生活部長に送付したり意見照会をしたり協議をする等していません。

ⅴ、「報告」は、これらの経過からすれば、本計画は、二号要件に該当しないといわざるを得ないとしています。

 9、法第4条①項三号 「埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港湾局を含ム)ノ法律ニ基ヅク計画ニ違背セザルコト」

ⅰ、この点についても、1992年ブラジル・リオデジャネイロで開催された国連地球サミットで提起された「生物多様性条約」は地球環境保全にとって死活的に重要な条約です。この条約に基づき日本国は「生物多様性基本法」を2008年に制定し、同法に基づき国は「生物多様性国家戦略2012~2020」を、沖縄県は「生物多様性おきなわ戦略」を制定しています。

ⅱ、前者は、沿岸域を分析し「北の海ではアザラシが、南の海ではジュゴンが泳ぐ姿が見られるなど、人間と自然の共生のもとに健全な生態系を保っている」と指摘しています。

ⅲ、後者は「ジュゴンとその生息環境が保全され、ジュゴンの泳ぐ姿が見られるようになっています。またウミガメが産卵する砂浜が保全されています」と指摘しています。

ⅳ、こうしたことから、本件埋立計画は三号の要件も満たさない可能性が極めて高いと指摘しています。また事業者は、海岸法第2条の3に基づいた「琉球諸島沿岸保全基本計画」の要求する手続も履践していません。

ⅴ、これらの点から、本計画は上記三号に基づく「法律に基づく計画に違背」していることは明らかです。

 10、辺野古新基地計画については、埋立用土砂の採取に伴いキャンプシュワブ近くの湖から流出する河川の流れを変更する必要があり、この許認可権は名護市長にあります。また県外の土砂採取予定地については、「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」が5月31日に結成されており、沖縄県議会は「公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例」を7月13日に可決し、辺野古基地建設の前に大きな壁としてたちはだかり、安倍政権辺野古基地建設のアキレス腱のひとつです。戦争法案廃案の全国世論と沖縄辺野古新基地反対運動、京都の丹後半島Xバンドレーダー反対運動が一体となって安倍政権を退陣に追い込む展望が大きく開けています。 

 (弁護士 岩佐英夫)