立憲主義を取り戻すために〜いますぐできる3つのこと
安倍政権は、9月19日、ついに、自分を縛る憲法という「鎖」を振り切りました。
日本国憲法前文には次のように書かれています。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
多数の国会議員が、国民の代表であることを忘れ、憲法に違反し、「人類普遍の原理」に背きました。
この暴挙を心に刻むために、私たちは9・19を「激怒記念日」と名付けます。
私たちは、彼らから、この国の”立憲主義”を取り戻す必要があります。
そのために、まずはつぎの3つのことを提案したいと思います。
1 いまの「許せない」という気持ちを書き留めよう
9・19はこの国に”立憲主義”を取り戻すための新たなスタートの日です。
私たちは今回のことを決して忘れるわけにはいきません。忘れることは彼らの暴挙を追認することになるからです。
この日の気持ちを忘れずに、思いを持ち続けるためには、書いておくことが一番です。手帳や日記に、いまの自分の気持ちや感想を克明につづりましょう。
自分が何に大きな怒りを感じているのか、どこが許せなかったか、なにが嫌だったのかを綴りましょう。気になった新聞記事を一緒に貼り付けてもよいでしょう。
安保法案を廃案にするためのこれまでの活動が、これから新しく形を変えてスタートするにあたって、ここで一旦気持ちを整理しておくことは有意義です。
この作業により、あなたにとっての一番の「ターゲット」が何かが見えてくるはずです。そして、今後、いつでも、スタート地点の気持ちに戻ることができるでしょう。
まずは、あなたにとっての「スタート地点」を固めることを提案します。
2 反対派議員の渾身の国会演説をもう一度見よう
今国会において、私たちの選出した国会議員たちがどのような仕事をしたのか、しっかりと確かめることが大切です。
国会議員らの記名投票の結果は、以下でご覧いただけます。
そして、私たちの声をよく代弁してくれた議員には労いと応援のメッセージを、憲法をやすやすと踏みにじった議員には抗議のメッセージを届けることを検討してください。
16日の地方公聴会終了後、速やかに安保法案を可決成立させようとする賛成派議員らに対し、反対派議員は全力で抵抗しました。
17日には、鴻池参院特別委員会委員長の不信任決議案、中川参院議院運営委員会委員長の解任決議案、中谷防衛相の問責決議案の提出、18日には、山崎参院議長の不信任決議案、安倍首相の問責決議案、内閣不信任決議案、鴻池特別委員会委員長の不信任決議案の提出と続きました。
これに対して、与党側は、参院特別委員会では、予定されていた総括質疑もしないまま、与党議員らが突然委員長席を取り囲んで採決手続を強行しました(そのため客観的におよそ採決がなされたとは認められないものとなりました)。
さらに、参議院本会議では、討論時間を制限する動議を提出し、こともあろうに最重要法案である安保法案の討論時間まで15分以内に制限しました。
反対派議員たちは、数の力で追い込まれながら、これらの議案の趣旨説明や討論において、私たち国民の反対の声を代弁すべく、精一杯の演説をしてくれました。
京都選出の福山哲郎議員も、参院本会議での安保法案の反対討論という最終局面において渾身の演説をしてくださいました。
その言葉は、私たちだけではなく、戦後70年間、立憲主義、平和主義、民主主義を大切に守ってきたこの国の多くの人たちの「魂」から発せられた言葉のように、生き生きと力をもって、国会議事堂に響き渡ったように感じました。
だから、ライブでご覧になった方も、見逃してしまった方も、いまいちど反対派議員の演説をご覧になることをおすすめします。与党議員の演説と見比べてみるのもいいでしょう。
国民の声を代弁するという「代議士」の仕事がどういうものか、確かめることができると思います。
※ 国会中継は、過去のものも含め、衆議院、参議院それぞれのホームページで観ることができます。日付検索でき、発言者ごとに簡単に選択することができます。
※ 17~19日の国会審議の主なものは以下のとおりです(敬称略)。いずれも見応え十分です。
9月17日 参議院特別委員会(鴻池委員長不信任決議案)
趣旨説明 福山哲郎(民主党・新緑風会)
反対討論 塚田一郎(自由民主党)
賛成討論 大塚耕平(民主党・新緑風会)
賛成討論 清水貴之(維新の党)
賛成討論 井上哲士(日本共産党)
賛成討論 水野賢一(無所属クラブ)
賛成討論 福島みずほ(社会民主党・護憲連合)
賛成討論 山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)
※問題の安保法案の採決手続は4:00:00ころよりご覧ください。9月18日 衆議院本会議(安倍内閣不信任決議案)
趣旨弁明 枝野幸男(民主党・無所属クラブ)
反対討論 棚橋泰文(自由民主党)
賛成討論 岡田克也(民主党・無所属クラブ)
反対討論 赤羽一嘉(公明党)
賛成討論 松野頼久(維新の党)
賛成討論 志位和夫(日本共産党)9月19日 参議院本会議(安全保障法案2本)
反対討論 福山哲郎(民主党・新緑風会)
賛成討論 石井準一(自由民主党)
反対討論 小野次郎(維新の党)
賛成討論 谷合正明(公明党)
反対討論 小池晃(日本共産党)
3 デモや集会に参加しつづけよう
法案が事実上参院を通過したことで、危険は現実のものとなりました。
これまで関心の薄かった人たちも、現実化するリスクを前に関心をもつようになるでしょう。
デモや集会は沈静化するどころか、活性化し、学習会や勉強会などの草の根の活動がますます広がっていくでしょう。
デモには、つぎのような効果があります。
2016年7月の参院選が一つの区切りといえます。
まずはその日を目標に、デモや集会に参加しつづけましょう。
そして、もっと学び、もっとつながりましょう。
憲法は、今回のような事態を想定しています。
日本国憲法98条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
日本国憲法12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
私たちそれぞれが、それぞれの持ち場で、賢明で判断力のある国民として、努力を続けることが大切だと思います。
(弁護士 山下信子,弁護士 古家野晶子)