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【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

ウェブ学習会 「安保法廃止に至る現実的なルートは何か」(下) ~選挙ルートを現実的ルートとするために

本連載の(上)と(中)のおさらい

 (上)では、裁判所による安保法の違憲判決を待っていても、その期待に裁判所が応えてくれるか分からないことを、(中)では、安保法反対の世論を拡げて選挙で安保法反対派議員を多数にしたくても、安保法反対の根拠となる情報自体が報じられにくいメディアの現状を見てきました。

ウェブ学習会「安保法廃止に至る現実的なルートは何か」(上)~裁判所による違憲判決の可能性 - 安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

ウェブ学習会「安保法廃止に至る現実的なルートは何か」(中)~選挙による安保法反対派当選の可能性 - 安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

 そこで本連載最終回の今回は、このような現状を乗り越えるすべがあるかについて考えてみましょう。

 

「茹でガエル」状態

 皆さんは「茹でガエル」というものをご存じでしょうか。
 「カエルはいきなり熱湯に入れられると、すぐに飛び跳ね脱出し、生き残るけれど、冷水に入れられたあと、緩やかに温度を上げていかれると水温の上昇に気付かずにそのまま死亡する」という話です。
 記者クラブ、特定秘密保護法の下で少しずつ、少しずつ自由な報道、豊富な情報を奪われていっている日本の国民はこの「茹でガエル」と重ならないでしょうか。

 要は日本の国民やメディア自身がその危機をどれくらい自覚しているのかという問題です。
 皆さんは政府がメディアの自由な報道に影響力を行使したあの事件、あるいはメディアが報道の自由をそっと仕舞ってしまったあの事件を覚えていますか。

籾井勝人NHK会長「政府が右ということを左というわけにはいかない」

 2014年1月、籾井勝人氏がNHKの会長に就任しました。籾井氏はその就任会見において「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」、「(NHKの放送内容が)日本政府と懸け離れたものであってはならない」などと発言しています。 

www.nikkansports.com


NHKの安保法案報道

 実際に2015年の安保法案に関するNHKの報道を見てみると、例えば2015年5月20日には安倍晋三首相がポツダム宣言について「詳らかに読んでいない」と答弁し、このことは「戦後レジームからの脱却」を標榜する首相が、そもそも「戦後レジーム」の基礎となったポツダム宣言を理解していないことを示すものとして問題となりました。
 ところが、NHKのニュース番組「ニュースウォッチ9」はこれを報道しませんでした。

 また、2015年6月1日には中谷元防衛大臣が安保法が成立した場合日本に対して攻撃の意思のない国に対しても攻撃する可能性を排除しない旨答弁したり、2015年8月5日には同じく中谷大臣が後方支援で核ミサイルも「弾薬」にあたるとして運搬可能と答弁したりして問題となりました。
 が、やはりニュースウォッチ9は報道しませんでした。

 さらに、放送に割く時間をみてみても、2015年8月30日に国会前で安保法案に反対する大規模な抗議デモが行われ、民放各局は相当の時間をとってデモの様子を放映しました。
 例えばTBS「報道ステーション」では12分を割いています。しかし、ニュースウォッチ9では30秒でした。
 

www.kamogawa.co.jp



自民党のNHK受信料義務化提言

 安保法成立直後の2015年9月末には、自民党の小委員会が受信料の支払い義務化を求める提言書をまとめました。

www.j-cast.com

 安保法案の成立過程においてNHKが果たした役割と提言書のタイミングからすると、まるで政権与党からNHKへの「ご褒美」のように思えてしまいます。

 

報道ステーション「I'm not ABE」事件

 2015年3月に、TBSのニュース番組「報道ステーション」でコメンテーターの古賀茂明氏が「菅義偉官房長官をはじめ、官邸の皆さんにはバッシングを受けてきた」、「I am not ABE」などと政府批判を展開しました。

iwj.co.jp

 これに関して翌4月に政府与党である自民党がTBSを党本部に呼んで事情聴取をしました。

 このときの事情聴取について、ジャーナリストの池上彰氏は「言論の自由・表現の自由に対する権力のあからさまな介入」と批判し、BPOはその意見書において「政権党による圧力そのもの」と非難しました。


「沖縄の2紙は潰さないといけない」

 その後、2015年6月には与党自民党の文化芸術懇話会で大西英男議員が 「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番。」と述べたり、長尾敬議員が「沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか。左翼勢力に完全に乗っ取られている。」と述べるなど、メディア統制の意欲を露わにするなどしています。

   表題の言葉は講師を務めた百田尚樹氏の言葉です。

www.asahi.com

 

高市早苗総務相停波発言

   また、2016年2月6日には、高市早苗総務大臣が衆院予算委員会において、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返せば、放送法4条違反を理由に電波法76条に基づき停波、つまり電波停止を命じる可能性に言及しました。

http://mainichi.jp/articles/20160218/dde/012/010/060000c

 

キャスター降板

   このような流れの中、2016年3月末、テレビ朝日「報道ステーション」ではメーンキャスター古舘伊知郎氏が、TBS「NEWS23」ではアンカー岸井成格氏が、NHKでは「クローズアップ現代」の国谷裕子氏がそれぞれ番組を降板しました。
 いずれのキャスターも政権に対する批判的報道も物怖じせずにできるキャスターとして評判の方でした。

www.sankei.com



情報がなければかき集めて発信すればいい

   こうして振り返ると、なんだか確かに日本の報道の自由がどんどん奪われてきている気がしませんか?
 あまり気付いていなかったけれど、自分が浸かっている水は、実はグツグツ沸騰している熱湯な気がしてきましたか?

 報道が萎縮し、国民が十分な情報を受け取ることができないのであれば、情報受領→検討・判断→世論形成→投票行動という有権者の投票行動メカニズムが機能しません。
 となると、メディアの萎縮が始まった現代では選挙による安保法廃止の可能性もどんどん希薄になっていく一方なのでしょうか。

 しかし、あきらめが良すぎるのもどうでしょう。

 情報が少ないならかき集めればいい、発信すればいい。
 ナチスドイツの時代や大日本帝国憲法の時代とは違い、現代はそれができる時代です。

 かつて、メディアが情報を独占していた時代は、表現の自由はメディアの報道の自由と国民の知る権利に再構成されると言われていました。
 しかし、インターネットの出現でそのような状況は大きく変わってきています。

 インターネットの発達で市民のテレビ離れが進み、テレビメディアが持つ影響力が相対的に小さくなる一方で、インターネットメディアによる情報発信が盛んになりました。
 今回の記事で引用しているJ-CASTニュースやIWJなどはインターネットメディアの代表格です。

 また、物理的、商業的制約からくる編成や編集から比較的自由なインターネットの記事では、各メディアがこれまでになく旗幟鮮明であるとする意見もあります。
 たしかに、一部で「有料右翼チラシ」と渾名される産経新聞と、一部で「小沢一郎ファンクラブ通信」と渾名される日刊ゲンダイでは、安倍政権の政策評価が180度違います。
 そしてインターネットでは、さしたる費用も要することなく、これらの記事を次々と見比べていくことができます。

 さらに、インターネットではテレビメディアでは掬いきれない国会、記者会見、デモ等の様子が動画でライブ配信されるなどしており、一次情報へのアクセスも可能です。
また過去のニュース、海外のニュース、政治家の過去の言説、専門家の見解、データベース等も簡単に検索することが出来ます。

   このように考えると、現代では政府によるメディア統制が強化されているとしても、情報インフラの発達によって、国民はその気になれば豊富で多様な情報に接することが可能であることに気付きます。

 そしてインターネットは、ブログ、Twitter、Facebookなど、それらの情報や意見を発信する手段も用意してくれています。

 

選挙ルートはまだ生きている

   インターネットで情報をかき集め、発信し、日常会話、デモ、パレードへと繋ぎ、これらの情報をまた受領、発信していれば、やがてこれらの情報は新聞や地上波といった従来メディアにも乗るようになっていきます。
   インターネット上の通信アプリLINEによって連絡を取り合い、Twitterで情報発信をする学生団体SEALDsは、国会前の10万人以上規模のデモの立役者となり、日本全国でデモというものを「ふつうのこと」に変えてしまいました。
  「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログのエントリーは、国会の議論となり、国会前スタンディングを発生させ、ついには政府を突き動かしました。

 インターネットの情報発信と実社会での発信のサイクルは、実は有権者の投票メカニズムをこれまで以上に活発化することができることが既に実証されつつあるといえるのではないでしょうか。
 すなわち、選挙ルートはまだ現実的ルートとして生きています。

 もちろん、そういった情報発信のサイクルに参加するもしないも各人の自由です。
 しかし、選挙の結果はイヤでも受け入れてもらうしかありません。

    安保法廃止はもちろんのこと、TPP、格差社会、子育て問題、憲法改正…いずれも今の10代~20代のこれから世代と30代~40代の現役世代が今後直面してゆく問題です。

 10代~40代の皆さんはこれらのことを自分たちで決めますか、それとも50代以上の世代に決めてもらいますか。自分たちで決めたいなら、ひとりでじっと見て、ボヤいているだけでは、ちょっと足りません。


    結局のところ、選挙ルートを安保法廃止に至る最も現実的なルートにするためには、国民各自の「じゃあ、Facebookでシェアしてみようかな」、「週末のデモに行ってみようかな」、「友達と少し政治のことも少しは話してみようかな」、という+αの行動が必要です。

 さしあたりは次の参議院選挙に向けて、自分がすべきことを考えてみて下さい。

 もし、自分たちの問題を自分たちで決めたいのなら。

(おわり)

弁護士 谷口 和大

 

※あわせてお読みください。↓↓↓

gekidojo-kyoto.hatenablog.com