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【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

安保法案反対デモの報じられ方(新聞編)~世界とつながる「窓」のゆがみに気づいていますか? ~

★2015年9月までのブログ★


 みなさんは、朝起きて夜眠るまでに、何人の人に会いますか。
 どれだけの場所に行きますか。
 職場と往復するだけ、その周りの人や家族に会うだけ。そんな方も多いのではないでしょうか。

 世界の人口、世界の広さに比べて、それはあまりに少なく狭いものです。
 私たちが直接見聞きできることは限られています。

 

 でもそんな私たちが、世界のことをせいぜい数時間か数日の遅れで知っています。
 新聞やテレビ、インターネットの力です。

 新聞やテレビのことをメディア(=媒体)と言いますね。
 媒体というのは、何かと何かをつなぐもののことです。

 世界と私たちの間にたって、世界とつないでくれるもの、それがマスメディアです。
 私たちの家に、世界中につながる「窓」がぽっかりと開いていて、それを通して私たちは家の中にいながら世界を眺めています。

 

  しかしその「窓」は、どこかが黒塗りだったり、ゆがんでいたり、色が付いていたりするかもしれません。
 その顕著で深刻な例を、最近、目の当たりにしました。

  

 全国で行われた最大規模の安保法案反対集会

 8月29・30日の週末は、全国各地で安保法案に反対する集会が行われました。
 京都では、29日(土)に、京都弁護士会主催の「平和安全保障法制の今国会での成立NO!緊急府民大集会」が行われ、円山公園音楽堂に4500人もの府民が集いました。
 広い円山公園音楽堂が参加者で埋め尽くされ、立ち見で溢れた様子は圧巻でした。数千人の聴衆の迫力というのは本当にすごいです。京都弁護士会の歴史でも、これだけの方が集まったのは初めてのことでした。

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 翌30日(日)には、日本全国で一斉に、安保法案に反対する集会が行われました。

 東京では、国会議事堂の周辺で集会が行われ、10万人規模の人びと(※デモの参加人数については末尾参照)が一帯を埋め尽くしました。大阪の扇町公園にも2万5千人、埼玉のJR大宮駅前にも1万5千人、その他全国47都道府県の計300カ所以上で抗議集会やデモが行われたそうです。
 全国で十数万人の人が、同時に声をあげたということです。安保法案反対の集会として、これまでで間違いなく最大のものだったと言えるでしょう。
 

 ここ数十年の日本は、デモの盛んな国ではありませんでした。
 しかし、いま、それが変わってきています。
 これまで政治的な集まりに参加したことがなかった人たちが、続々とデモや集会に参加しています。
 政治への関心が低いと言われていた若者たちや、子育て世代が、自らの言葉で語りはじめています。
 円山集会でも、幼い子を連れたパパやママ、杖をついてやっと歩けるご年配の方、車いすの方など、会場に来るだけで大変だっただろうと思う方もたくさん来られていました。

 

 今回の安保法案には二重の問題があります。
 一つは、日本が戦争に協力する法律が立法されようとしていること、つまり法律の中身の問題です。
 もう一つは、政府が憲法を無視して暴走していること、つまり立憲主義の問題です。

 私たち法律家の目には、後者の問題がおそろしく重大に見えています。憲法は国家権力に対する命令です。憲法が国家に「鎖」を付けることで、国家の勝手な行動を許さないようにしているのです。
 今の安倍政権はどうでしょうか。憲法学者の圧倒的多数が違憲と指摘、世論の過半数が安保法案に反対。それでも安倍政権は、衆議院で安保法案を強行採決させました。憲法に反している上に、民意にも反しています。
 政府が、憲法という「鎖」を振り切り、議会が国民を代表することも忘れて、暴走し始めているのです。

 

 これだけの人がデモに立ち上がったのはなぜか。
 安倍政権という暴れ馬を今おさえつけなくてはと、みんなが危機感を覚えているからではないでしょうか。
 デモに参加するということは、その場所に実際に足を運ぶということです。
 体が不自由な人も子連れの人もいます。趣味の集まりでもないし、お金がもらえるわけでもありません。
 それでも、主催者の呼びかけに応じて、貴重な休日を潰し、全国で十数万人もの人が実際にその場に来た。その事実は大変な重みを持っています。
 このデモは、日本国民自らが、立憲主義の意義を問う、歴史の重要な一場面といえます。

 

安保法案とメディア

 ところで、そんな重大な事実は、果たしてみなさんに正しく届いていたでしょうか。
 メディアは皆さんと世界をつなぐ「窓」だと言いました。
 みなさんの持っている「窓」に、デモの風景はどう映っていましたか。
 真ん中に大きく、鮮やかに映し出されていたでしょうか。
 それとも、隅っこのほうに目立たない形で映っていたでしょうか。

 私たちは、主要な日刊新聞の報道状況を調べてみました。調べたのは、以下の6紙で、いずれも京都における報道です。

            発行部数
 1.読売新聞    約912万部
 2.朝日新聞    約680万部
 3.毎日新聞    約328万部
 4.日本経済新聞  約274万部
 5.産経新聞    約162万部
 6.京都新聞     約48万部

 ※発行部数について:1~5は2015年1~6月の平均値、6は2014年4月時点のデータより(いずれも日本ABC協会調べ)

 

 いま、日本で一番読まれている新聞は、読売新聞です。その発行部数は、日本どころか世界で1位です(ギネスブック認定)。

 その大新聞である読売新聞、デモの翌日である31日月曜日の朝刊1面で30日の全国デモがどう書かれていると思いますか。
 なんと、書かれていないのです。

  読売新聞のデモの記事の掲載箇所は、見開きの社会面のしかも右側のモノクロページ(28面)で、前日の枚方市長選の結果を報じる記事の下です(枚方市長選は1面記事でもあります)。

 【読売新聞の記事】2015年8月31日朝刊・社会面(28面)より

 30日の「安保法案反対」のデモについて報じた文字数はわずか277字で、デモの写真はあるものの、傘を差している参加者を後ろから撮影したものです。プラカードは一枚も見えません。せいぜい二~三百人の参加者が、待ちぼうけでもしているような写真です。
 しかも肝心の「憲法」という言葉は一言も出てきません。参加者の「声」も「戦争させない」などとまとめられてしまっています。

 さらに、30日ではなくその前日に行われた参加者約五百人の「安保法案賛成」のデモの報道に228字が費やされています。これも写真付きで、「YES!安保法案」と書かれたプラカードがいくつも掲げられているのがわかります。写真だけを見比べると反対派のデモとそれほど変わらない規模に見えます(むしろ賛成デモのほうがスマートな写真です)。

 隣には、安保法案反対デモで逮捕者が出たということが「機動隊員暴行容疑 デモ参加者2人逮捕」という見出しつきで書かれています。218字です。

 国会前のデモ(277字)は、安保法案賛成デモの記事と逮捕記事に囲まれる(合計446字)格好です。

 

 この記事をぱっと眺めてみてどうでしょうか。
 国会前の反対デモなんて、どうでもいいことのように見えませんか。
 反対デモにはしょぼくれた写真を選択し、説明はほどほどに済ませておく一方で、2人の「男」が現行犯逮捕されたことと、賛成デモとを、それ以上の字数を使って書くと、国のあり方を問う歴史上の大デモが、反対派の暴走くらいに見えてきます。
(なお、朝日新聞毎日新聞京都新聞は、国会前デモを1面で大きく取り上げています。)

 

 メディアは印象操作ということができます。
 嘘は書かずに、印象を操れるのです。 

 まず、メディアは見る人に対して、ニュースの重要度を自分で発信できます。
 新聞が1面に書くということは、それだけで「重要だ」というメッセージになります。
 紙面の中で大きな面積を使えば、これも「重要だ」というメッセージになります。逆に、扱いを小さくすれば、「重要でない」というメッセージを発することもできます。
 たとえば科学に疎い人が、科学上の大発見の記事などを読んでも、その重要性が正確に理解できません。そういう方は、新聞で1面に書かれ、大きな面積を占めていれば、「どうやら重要らしい」という風に判断するでしょう。はっきりした意見を持たない人は、新聞の紙面の位置や大きさだけで、重要性を簡単に誘導されてしまいます。

 言葉の選択や事実の取り上げ方でも、簡単に読み手を誘導することができます。
 「安保反対 国会を包囲」(毎日)と書けば一大事件に聞こえますが、「賛否両派 国会前などで」(読売)と書けば、両派同規模でちょっとした集会があっただけに聞こえてきます。
 更に、「憲法」という言葉を全く出さずに、「戦争させない」という「声」だけ取り上げれば、立憲主義の危機であるということも簡単に目隠しされてしまいます。

 

 読売新聞のやっているのはそういうことです。
 読売新聞の記事作りには、30日のデモの意義や影響をできるだけ小さく見せる、そしてこの法案の違憲性から読者の目をそらそうという作為がはっきり感じ取れます。

 

 日常に追われ、今回の法案も気にはなっているがしっかりとした意見は持てていない、デモにも行ったことがない、そんな方は沢山おられます。
 読売新聞でこの8月30日デモを知った人は、どう理解したでしょうか。
 歴史上の大事件だと思ったでしょうか。
 「ふ~ん、反対派からは逮捕者が出たのね」、その程度の印象に誘導されてしまった人も少なくないのではないでしょうか。

 

 新聞社は読者から購読料をとっています。そして、読者を抱えることで、広告主から注文をとっています。新聞社は読者の存在で成り立っているのです。
 読者に正確な事実を伝え、考える材料を提供することは、新聞社の責務です。大新聞ほど、そのことが強く求められます。 
 日本で最大の発行部数をほこる新聞社が、こうしたゆがんだ態度で報道をすることは、読者に対する裏切りというほかありません。

 

 私たちは8月31日の新聞各紙の比較分析をしてみました。

【PDF】8月30日の安保法案反対デモについての新聞報道の比較(2015年8月31日朝刊)

  朝日新聞毎日新聞京都新聞は、1面を含め、多くの紙面を割いて、このデモを報じています。ジャパンタイムズも1面です。複数の海外メディアも大きく報じています。
 ところが、読売新聞に加え、産経新聞日経新聞は、社会面でしかデモを取り上げていません。
 産経新聞は、デモを違法集団のように書いた上、論争の中身には全く触れていません。日経新聞では、見つけるのが困難なほど小さな記事しか載っていません。

f:id:gekidojo:20150906150507j:plain  さらに、朝日、毎日、京都の三紙は、いずれも1面から憲法問題に言及する参加者の声を紹介しているのに対し(「憲法を守ったほうがいいっておかしな主張ですか」「憲法や民主主義を取り戻すための大事な時期」など)、読売、産経、日経の三紙は、共通して憲法問題に全く言及していません。

 

 世界を知るために自分がお金を払って設置している「窓」にどんなゆがみがあるか、そのゆがみを自分は許容できるのか、一度慎重に考えてみてはいかがでしょうか。

 

 次回はNHKの報道を検証します。

 

 (弁護士 山下信子,弁護士 古家野晶子,弁護士 山本了宣)

 

※国会周辺デモの参加者数について

 国会周辺デモの参加者数が、主催者発表の12万人なのか、警視庁のいう3万3000人なのかで議論になっていました。
 この点について生活の党の多賀谷亮氏が、当日、1週間前、2週間前の国会議事堂周辺の地下鉄の駅の改札を出た人数を照会し、そこから、74,189人がデモの影響によって増加したと推定しています(多賀谷亮氏のブログ「4駅のデータ」、9/2
 現時点では、この数値が客観的で、信用性が高いと言えるでしょう。

 桜田門駅が開示拒否、更にJRやバス等の移動手段を含まない数字なので、実数としてはこれに数万人を加えたのがデモ参加者数となると思われます。
 ですから10万人前後がデモに参加した可能性が高いと考えて、本文では「10万人規模」としています。

 ところで、産経ニュースが、国会議事堂前の写真を正方形に区切って人数の概算を行っており、それをみると、国会議事堂前を埋め尽くしたときに3万2000人程度になるようです(産経ニュース「安保法案反対デモ、本当の参加者数を本社が試算」、8/31
 この推計自体はおおむね正しいと思われます。ただそこで産経は、「12万人にはほど遠い」と言うのですが、当日は国会議事堂前のほかに5つのステージが設けられており(主催者作成の地図)、更に映像などからも国会議事堂前以外のエリアに多数の人が居ることは明らかでした。産経の結論は恣意的です。

 警視庁の数字は、産経の概算した国会議事堂前人数とほぼ一致します。警視庁発表の人数は、国会議事堂前に居た人数を言っている可能性が考えられます。

 

※最後まで自分たちができることをやりましょう!

gekidojo-kyoto.hatenablog.com

 

※ 9月13日(日)府民大集会のご案内です。
  奮ってご参加ください!

9-kyoto.net