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【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

【寄稿】原発が軍事攻撃を受けたらどうなるのだろうか?~弁護士 郷路征記

★寄稿★
※札幌弁護士会の郷路征記弁護士にご寄稿いただきました!

原発が軍事攻撃を受けたらどうなるのだろうか?

山本太郎議員の質問「弾道ミサイルが原子炉を直撃したら?」

 山本太郎議員は7月29日参議院の委員会で「弾道ミサイル等が川内原発の稼働中の原子炉を直撃した場合、最大でどの程度、放射性物質の放出を想定していますか」と質問した。

www.youtube.com


 原子力規制委員会委員長は「弾道ミサイルによって放射 能が放出される事態は想定してない」と答弁し、安倍首相は「武力攻撃事態は、その手段、規模の大小、攻撃パターンが異なることから、これによる実際に発生する被害も様々であり、一概にお答えする ことは難しい」と、質問の趣旨をはぐらかして答えなかった。
 この場合についても、最悪の事態は想定されておらず、それに対する備えのないまま戦争法案の制定が進められているようだ。

 

原発に対する攻撃方法とは?

 「原子力発電とエネルギーに関し、信頼に値する情報を発信すること」を目的に設立された日本エネルギー会議のHPに、「テロリストと原発」という論文があった(北村俊郎さん)。 

テロリストと原発 | 日本エネルギー会議

 読んでみて、原発に対して実に多様な攻撃方法があるのだというのが実感である。

①送電線を攻撃して外部電源を断ち原発を停止させ、原子炉冷却にかかわる非常用電源を攻撃すると、福島第一原発事故の再来となる。

②原子炉建屋の天井は脆弱で通常爆弾、ミサイルやドローンで攻撃可能。定期検査中、原子炉(の上部)は開け放された状態。使用済燃料プール (以下、 プールと略す。)の上部にカバーはない。プールの下部に穴があけられれば、漏れるのと同量の水を補充しなければ、燃料棒が露出する。プールに水を供給する装置が攻撃されても同じ。

原発の制御には圧縮空気が多く使われている。コンプレッサーを破壊すれば、多くの機器が制御できなくなる。

④通信装置の破壊も、事故対応に致命的なダメージを与える可能性がある。

⑤原子炉停止と同時に中央制御室の制御盤や電源室を破壊されれば炉の冷却はできなくなる。

⑥猛毒塗料或いは毒ガスによって監視員を操作盤に近づけなくすることによっても目的は達せられる。

⑦従業員を装ったテロリストによるプラスチック爆弾や毒薬の持ち込み。

  弾道ミサイルの直撃によっても同様のことを起こせるのだろう。
 そのうえ、原子炉格納容器や圧力容器を破壊することにより、大量の放射性物質を環境に放出することも可能なのだと思われる。

 その規模はどの程度のものと想定されるの だろうか。

 

福島第一原発の事故で東日本壊滅はあり得た

 平時に発生した福島第一原発の事故でも、東日本壊滅が危惧されていた。
 故吉田昌郎福島第一原発所長は、2号炉に冷却のための注水ができなくなった時に、東日本壊滅を危惧している。 

www.sankei.com

 菅直人元首相も当時同じ危惧を共有していた。

ameblo.jp

 小出裕章さんは4号炉のプールに冷却のための注水ができなくなる可能性を考えた時に東日本壊滅の危機を感じている。

www.youtube.com

 

 原発が軍事攻撃を受けた場合 

 原発が軍事攻撃を受けた場合は、どうなるのであろうか。

 「日本の原発は無防備な状態で放置されているから、原発防衛体制の構築が急務である」とする立場からの論考(北村淳さん)は次のように述べている(引用元のJBPressの記事「無防備な状態で放置されている日本の原発」を購読するには、無料会員になることが必要)。  

blog.goo.ne.jp

①外部電源供給システムやプールは、軍事攻撃に極めて脆弱であることが誰の 目にも明らかとなった。

②外部電源供給システムや制御システムが破壊されてしまうと、福島第一原発事故の再来。

③それより深刻なのは、プールが破壊された場合。
 天井を軍事攻撃に対処で きるよう に造ることはできない。
 核燃料棒が攻撃によって大気中に飛び散ると福島事故の数倍の惨事。
 周囲の人は即死、汚染処理用ロボットの電子回路も作動せず、周辺は死のエリアになる。

④日本各地に点在する原発が一斉攻撃された場合、日本には人の住める地域が少なくなってしまう可能性すらある。

 

 元東芝原発技術者であった小倉志郎さんが「原発を並べて自衛戦争はできない」という論文を2007年に書いていた(福島第一原発事故前の論文である。)。

『原発を並べて自衛戦争は出来ない』(上)(下) | ちきゅう座

 そこで小倉さんは、次のように書いている。

原発は、武力攻撃を受けても安全であるという条件で設計されていない。

②原子炉を冷却するための機能を担う装置、電源は全て原子炉の外部にあ り、武力攻撃を受けるとひとたまりもなく破壊される。

原発で最も危険なのは使用済核燃料で、その中に溜まった厖大な放射性物質が万一環境に放出された場合の危険性は、言葉に表現することも困難なくら い大きいのだが、プールは原子炉建屋の4階にあり、その上は天井で、天井は武 力攻撃に対して全く無防御である。プール自体も武力攻撃から守られていない 構造である。冷却が失われて爆発した場合の放射能汚染も広大な土地に及ぶ。使用済核燃料が武力攻撃によって集合して核反応が起きた場合、どうすることもできない。

  結論として小倉さんは、原発が武力攻撃を受けたら、日本の土地は永久に人が住めない土地になり、再び人が住めるように戻る可能性がないと述べている。

 

安部内閣は、山本議員の説明に応え、国民に判断の資料を与えるべき

 以上のとおり、「原発が軍事攻撃を受けた場合の最悪の事態」は、日本の国土が放射能汚染によって、人が住めなくなるということではないのだろうか?

 安倍内閣は、山本議員の質問に誠実に答え、この極めて深刻かつ重要な国土の安全に関わる大問題について政府の見積りと考えを明らかにして、国民に判断の資料を与え、「戦争法案」の是非について意見を問う必要があると、私は考え る。

 それをしないまま、戦争法案を成立させることは到底許されないのではないだろうか?

(弁護士 郷路征記)