【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

止められるのは今しかない!?~憲法違反の安保関連法案が成立した場合の法的効力~

 安保関連法案は衆議院強行採決され、現在参議院で審議されています。もしもこのまま憲法違反の法律が成立してしまったら、一体どうなるのでしょうか。

 

行政府は法律が成立すればそのまま執行します

 現在国会で審議されている安保法制関連法案は、国内のほとんどの憲法学者憲法違反であると判断しています。
 が、政府は法案を撤回することなく、その成立を目指しています。
 安保法制関連法案が成立した場合、これほど明らかに違憲であるにもかかわらず、行政府はその法律を執行できてしまうのでしょうか。

 日本では法律による行政の原則が採用されており、行政は法律に従わなければならないこととされています。
 したがって、いかに違憲であるとしても、法律が成立した以上は当該法律は執行されます。

 今回の安保法制関連法案も例外ではなく、いかにその違憲性が明らかであっても、成立した以上、行政府はその法律を執行することができます。

最高裁判所違憲無効判決を下したらいいのでは?

 ただし、最高裁で法律の違憲無効判決が下された場合には当該法律の執行は通常差し控えられるようになります。
 では、安保法制関連法案成立後ただちに当該法律の違憲無効を求めて訴訟を提起することは出来るのでしょうか。

 この点、日本では抽象的に法律の無効を求めて訴訟を起こすことは認められていません。
 例えば自衛隊員が安保関連法に基づいて出動して、死亡し、遺族が国に対して国家賠償請求をするなど、具体的な権利義務に関する紛争が生じない限り、法律の無効を主張して訴訟を起こすことはできません。

 訴訟の結果、最高裁判決で違憲無効が示されれば、その判断は下級審を拘束します。ただし、訴訟提起から最高裁判決までは数年を要すると思われます。
 しかも、立法についてはその合憲性が推定される(合憲性推定の原則)とされていることもあり、一般的に裁判所は違憲判決を書くことに非常に消極的です。例えば砂川事件上告審判決では、日米安保条約についての憲法判断を敢えて回避しています。

 (ただ、一部で法律成立後ただちに違憲訴訟を提起する動きがあり、当該訴訟ではいかなる法的構成をとってこの問題をクリアするのか、注目されます。)

「やったもん勝ち」を止めるのは今しかない!

 したがって、憲法違反の安保法制関連法案は明らかに憲法違反であっても、一旦国会で成立すれば、その後具体的法律紛争が起こって、訴訟が提起されて、数年あるいはそれ以上かけて最高裁まで戦って、首尾良く違憲判決がされるまでは、各法律は行政府によって執行され続けます。

 そしてその間に日本国内の各種の制度はもちろんのこと、海外諸国との外交関係も含めて、違憲な法律の上には幾重にも既成事実が積み重なってゆき、法律を廃止して現状を変更することが難しくなってゆきます。

 おそらく現政権が狙っていることはこれです。つまり、違憲な法律を違憲と知りながら成立させ、「やったもん勝ち」の状況を作りだしてゆこうとしているのでしょう。いわば確信犯です。

 「法律が成立しても、問題があれば廃止すれば良い」「裁判をしたら無効になるんでしょ」などという簡単なものではありません。
 止められるのは今しかないと思っておいた方が良いでしょう。

(弁護士 谷口和大)

 

 ※安保法案成立に反対の方、お立場は問いません。
 8月29日の円山公園集会にぜひお越しください!

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 ※また、日弁連の請願署名にもご協力ください!

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