【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

【寄稿】「安倍なるもの」への挑戦~弁護士 折田 泰宏

※戦中生まれの折田泰宏弁護士(第21期)から寄稿いただきました! 

「安倍なるもの」への挑戦 

 2014年7月1日に、憲法解釈をねじ曲げて、日本が直接攻撃を受けていなくても集団的自衛権を行使できるとした安倍政権は、遂に、この5月に、国際支援法案と平和安全法制整備法という名で10法の関連法制を改正する法案を閣議決定し、これらの法案は衆議院を通過し、現在、参議院特別委員会の審議が行われています。 

 私は1944年生の戦中派であり、小学校の時から現行憲法の、民主主義・平和・基本的人権などの概念をたたき込まれてきたウルトラ護憲主義者であり、1954年に自衛隊が生まれて以来、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と明言している憲法9条2項との関係が理解できず、悶々として生きてきた国民の1人でした。

 大学で法律を学ぶことで自衛隊違憲であるとの確信を抱いたものの、この信念を貫くことが簡単ではないことが、任官してからすぐに起きた青法協攻撃で明らかとなりました。
 この世の中に「安倍なるもの」が大きな勢力としてあり、何かあれば鋭い牙を向けてくることが、駆け出しの法曹にも身をもって知らされたのです。
 伊達判決(砂川地裁第一審判決。東京地判昭和34.3.30 下級裁判所刑事裁判例集1・3・776)、福島判決(長沼ナイキ訴訟第一審判決。札幌地判昭48・9・7、判時712・249)も崩されていきました。

 しかし、これまでは、未だ、集団的自衛権武力行使まではしないとの良識が保守派にも残っていました。
 積極的平和主義という名の力の均衡論は我が国ではタブーでした。

 ところが、自民党が圧倒的に多数の議席を得て、安倍という1人の人間が権力を握ったことで、この状況は一変してしまったのです。

 この1年間の大変動で、大変恐ろしく絶望的であるとさえ思ったのは、安倍という人間が突然強権を振り回したということでは解釈できない背景があると感じたことです。
 自民党を含む政治家の動き、官僚、国際政治学者、マスコミ、企業、労働組合の動きを見ていますと、様々な動機はあると思いますが、「安倍なるもの」になびく体制が準備できていたように思われることです。

 ここで共通していますのは、憲法9条の完全な無視です。
 また、言論の自由を理由としたヘイトスピーチの容認、マスコミ規制、原発促進・輸出、武器輸出、公共工事に対する散財、最近では大学での文系縮小の流れ等「安倍なるもの」の黒い雲は限りなく拡がりつつあります。

 政治家について言えば、これほどの重大な政策の転換であるにも拘わらず、自民党では参議院の村上氏を除いて誰1人安倍に異議を唱える議員がいないという異常な事態となっています。
 野党側も、集団的自衛権の必要性は認めた上での煮え切らない対応を続けています。

 また、今回の法案作成について、短期間にこのような複雑怪奇で分かり難い法律をまとめ上げた我が国の官僚の優秀さは賞嘆に値いします。
 しかし、多分大学で法律を学んできたと思われる以上、このような法案をまとめる作業の中で少しは良心の痛みを感じなかったのでしょうか。
 国会前のデモに密かに参加する若手官僚がいるとの噂を聞きますが、そのような人たちでしょうか。

 このことで全く沈黙している企業は、多分、安倍が悪者になって「安倍なるもの」が実現することを密かに心待ちしているのでしょう。
 そこからふんだんに政治資金が注ぎ込まれる筈です。
 自衛隊予算だけでも毎年4兆円を超え、御用達企業には、三菱重工業川崎重工業日立造船日本電気東芝富士通等々、我が国を代表する企業が並んでいます。

 

 私は、今回の法案反対の運動は、単に法案廃止ということだけでなく、本格的に「安倍なるもの」に対して挑戦していくのでなければ、展望はないと考えています。
 それは、今後の参議院選挙、衆議院選挙に繋がる長期的な戦いであり、また、原発廃絶、反ヘイトスピーチとも繋がる幅広い運動となります。

 先ずは、次の選挙には自民党公明党に票を投じない運動が必要です。
 今回味わった一党独裁の恐ろしさを忘れないことが必要です。 

 自衛隊員に対する働きかけもできないだろうかと考えています。
 ベ平連が日本に駐留していた米兵に脱走を勧める運動をしていたことは有名ですが、我が国では、自衛隊法が施行されそれまでの国内治安を目的としていた保安隊が国防を任務とする陸上自衛隊に改組された時に、保安隊員のうち6%の約7300人が新任務のための宣誓を拒否して自衛隊を辞めたという歴史があります。

 最近の若者の動きは、大変頼もしく思っていますが、最後に、私と同世代の老人でもこんなに頑張っている人がいると分かっていただくために、私の敬愛するT氏を紹介したいと思います。
 T氏は60年安保世代の人物ですが、65歳で自分の会社経営をきっぱりと打ち切り、「反戦老人クラブ」の旗を掲げて全国を飛び回っています。
 この29日の円山公園集会への参加を呼び掛けましたら、つぎのようなメッセージを送ってきました。

「この日本の現状は、これを許してきた大人達に責任があるのだから、若者達にはいい背中を見せる責務があります。
 安倍がたくさんの課題を提供してくれるので、やることがたくさんありすぎて病気する暇もありません。
 あちこちでかけて友人が増えたことはうれしい。
 人生で最も充実した時を過ごしています。」 

 29日には、紅色の反戦老人クラブの旗を持って現れることと思います。

 

(2015.8.19 弁護士 折田泰宏)

 

※安保法案に反対の方は8月29日の円山公園集会に集まりましょう!

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