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【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

国民保護法、こんなの想定してどうするの?

★2015年9月までのブログ★

恐ろしい事態?

 国民保護のポータルサイトというのがあります(内閣官房)。
 これをみると、日本への「武力攻撃事態」として次の4つの類型が挙げられています。

武力攻撃事態の類型ごとの特徴 - 内閣官房 国民保護ポータルサイト

  こういう事態に備えて法を作り、こういう事態が起こったら住民の避難などを行うというのですが、果たしてどれくらい恐ろしい事態なのでしょうか。 

 

1 着上陸侵攻の場合

着上陸侵攻の場合

(上記サイトより引用)

 他国の艦船や飛行機が日本に上陸・着陸してくる事態。
 「沿岸部が目標になりやすいから注意」とのこと。「留意点」として「避難が必要な地域が広範囲にわたり遠方への避難が必要となる」「避難の期間が長期間にわたることも想定」「避難の経路や手段など行政機関からの指示に従い適切に行動しましょう」だそうです。
 このサイトの絵をみて「うわ、そんなん来たら、えらいこっちゃ」と思う人もいるでしょうが、そんな事態がほんとにあるのかというと、日本の近隣にそのような上陸作戦を展開できるほどの海軍力、空軍力をもつ国はないそうです。なーんだ。

 

2 弾道ミサイルによる攻撃の場合

弾道ミサイルの場合

(上記サイトより引用)

  他国からミサイルが撃ち込まれる事態。
 「発射された段階での攻撃目標の特定が極めて困難」「弾頭の種類(通常弾頭であるのかNBC弾頭(核、生物、化学兵器)であるのか)を着弾前に特定するのが困難」とあります。思わず「そらそうやろ!」と突っ込んでしまいます。
 いやいや、この事態は、ほんとに起きたら何をしたってアウトではないですか。これを想定して避難なんて実際できますか?
 しかし、そもそも、このミサイル攻撃事態がほんとにあるのかというと、国政政治研究者や軍事専門家のほとんどはその可能性は低いと言っているようです。泥もと自衛官も、京都弁護士会の講演会で、「地球はまるいから、北米に向けたミサイルは日本の上空を飛ばない、絵のトリックに騙されるな」と言ってました。なんだなんだ脅かすなよ。 

 

3 航空攻撃の場合

航空攻撃の場合

(上記サイトより引用)

  いわゆる空襲です。
 「弾道ミサイルの場合に比べ、その兆候を事前に察知することは比較的容易です」「都市部の主要な施設やライフラインのインフラ施設が目標となることも想定されます」とあります。
 太平洋戦争中も日本各地に空襲が頻繁にあり、事前に察知して「空襲警報」が鳴って防空壕に避難したりしていたのですね。でも、多くの多くの人がやはり犠牲になりました。ポータルサイトが言っているように都心を狙ってこられたら、避難なんてほとんど意味がないのではないでしょうか。
 たしかに空襲は、過去の戦争体験からしてあり得そうな事態と思うのですが、軍事専門家の一般的見解は「近隣諸国で我が国を空襲できる空軍力を有する国は存在しない」とのことです。そうなの、よかったよかった。

 

4 ゲリラ・特殊部隊による攻撃の場合

ゲリラ・特殊部隊の場合

(上記サイトより引用)

 「突発的に被害が発生」「被害は比較的狭い範囲に限定されるのが一般的ですが、攻撃目標となる施設(原子力事業所など)の種類によっては被害が拡大する恐れがあります」とのこと。

 これは恐ろしいことに、軍事的にもありうる事態と言われています。
 でも、ゲリラ部隊や特殊部隊が作戦展開するときに、軍事力で対抗するのはともかく、「いや、そこは住民避難の問題ではないでしょ」と素人でも言いたくなる。何千何万という部隊が組織的に進軍してくる事態に対して、あらかじめその地の住民が避難するのは分かりますが、そうでないのが「ゲリラ戦・特殊部隊作戦」でしょう。
 住民避難が可能なほどおっとりしたゲリラや特殊部隊がいますか?しかも原発狙ってくること想定してるなら、「それをまず止めて」とも言いたいし。 

 

立法事実がない

 なぜ、こんなにツッコミを入れているかというと、この法律は、余りに妄想的な想定と、ズレた対処法を、恥ずかしいほど堂々と主張しているからです。
 これを専門用語で「立法事実がない」法律と言います。立法の必要性を支える社会的な事実関係が存在しないということです。
 法律を作ってはいけない場合です。日本弁護士連合会も、2004年3月18日の意見書で、同様のことを指摘して法案に反対していました。

日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:「国民保護法案」についての意見書

 ありえない事態を想定して不必要に国民を脅かす。
 安倍政権が、例のアメリカの艦船に乗った母子を描いた紙芝居を使って集団的自衛権を必要だとアピールした、あの5月の記者会見を思い出します。同じやり方です。 

 

憲法の命じる安全保障とは

 こういうリスク想定を批判すると「それが平和ボケなんだよ」という意見もあるでしょう。
 しかし事実を意図的に正確に伝えないで国民を脅かして法律をつくるのは平和ボケよりたちが悪い。憲法は言っていますよ。 

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」(日本国憲法前文) 

 政府は、何よりこの4つの事態に至らないように、懸命に外交努力をするべきだ。
 平和的な国際貢献をして自国の安全保障を維持するべきだ。
 憲法はそれを政府に命じていると思います。

 それを怠って安易に「もし〇〇だったら怖いでしょ」の世界に行ってしまうのは無責任です。

 

(弁護士 吉田誠司)

 

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