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【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

戦中生まれの6名の弁護士有志、京都府下選出国会議員に安保関連法案の廃案を求める書簡を送付

 さきの15年戦争中に生まれた6人の弁護士有志が、京都府下選出国会議員に宛てた書面を作成し、本日(8月10日)記者発表のうえ、各議員に送付されました。
 6人の弁護士は、司法研修所の同期生で、法律家になって45年、行政や日弁連の役職など重職を担ってきた、考え方やスタンスを異にする有志ですが、安保関連法案の議論を憂慮して、「異例の行為」に及んだと言います。

 

 渾身の思いで練られた書面を読んで、感銘を受けた箇所を、不正確を恐れず、要旨紹介させていただきます。
 また、弁護士有志のご了解を得て、全文をブログに掲載しますので、ぜひ全文をお読みください。
 なお、この書面については、夏期休暇中の弁護士も多い中、短日で、200名を超える京都の弁護士が賛同しました。(8月10日 山下信子)

 

【要旨】  

① 有志はいずれも老境の域にあり、残された社会的活動の期間も長くはないが、次の世代に海外での戦争を担わせることは絶対にさせたくないとの強い思い、立憲主義と平和主義という憲法の根本原理が揺らいでいることを心から憂慮し、異例の行為に及んだ。

 

② 戦争に巻き込まれることは絶対にないとか、専守防衛の原則が基本方針であることに少しも変更はないと強調されても、強調が逆に説得力の乏しさを際立たせることになってしまう、法案自体があいまいなため、説明をしようとすると随所で矛盾ないしは破綻をきたしてしまう。

 

③ 首相の「総合的判断」という胸先三寸で自衛隊を海外に出すことができるという解釈が許されていいのか。

 

④ 自民党国会議員諸賢に対し~

・故前尾繁三郎氏をはじめ、幾多の秀でたバランス感覚と指導力を持った議員の謦咳に接し、過去の自民党の姿を知る者にとって、党内の意見統制、国民に対する説明中止、首相の応援団や側近の跋扈の様子には強い危惧感を覚える。

・首相の父方の祖父、故阿倍寬氏は、先の大戦中、東條内閣の下で、翼賛会の非推薦議員として立候補し当選、敢然と時流に抗し、勇気と良識を示したことを、今の自民党国会議員も学んで頂きたい。

・ 公認を得られるか否か、という目先の利益にとらわれているような国会議員に対しては、次の選挙において、国民の怒りが向けられることは必定であり、子どもや孫の世代のために、勇気を奮って本法案に反対していただくことを切望する。

 

⑤ 公明党に対し~

 首相らの最近の発言を見ると、公明党集団的自衛権にブレーキをかけたという思いは完全に裏切られている、公明党の反対によって封印されたはずの砂川事件最高裁判決が、封印したことを忘れたかのように首相らが語っていることは、異様な光景である。

 「平和の党」を党是とする公明党が、戦争を可能にする法案を推進することは、平和の党の自己否定であると思える、公明党自民党に翻弄され、自民党のために利用されているとしか見えない。

 参議院で法案に賛成しないことは当然、もし60日ルールによって衆議院で再可決がされる場合には、本法案に賛成しないことによって再議決を阻止することが、平和の党の最低限の責務ではないか。

 

⑥ 京都府下選出の国会議員に対し~

 本法案を廃案とするための勇気ある行動をとって頂くことを、今一度訴える。 

 

  【全文】

                        平成27年8月10日

京都府下選出国会議員 様

                 京 都 弁 護 士 会 会 員
                     司法研修所22期生有志
                       弁護士 加 藤 英 範
                               湖 海 信 成
                               高 木     清
                               谷 口 忠 武
                               出 口 治 男
                               北 條 雅 英

謹啓

 炎暑の続く日々ですが、益々ご清栄のことと御慶び申し上げます。貴台におかれましては、日夜国民のためにご奮闘されていることに深甚の敬意を表します。突然このような書信を差し上げることをご海容下さい。このような異例の行為に及んだのは、日本国憲法が拠って立つ立憲主義と平和主義が、現在国会で審議中の安保関連法案によって根底から揺らいでいることを心から憂慮するためであるという私達の心情を何卒ご理解下さるようにお願い申し上げます。

 私達6名は、いずれも司法研修所を昭和45年3月に修了した22期生で、現在京都弁護士会に所属している弁護士です。私達の年齢は81歳から70歳までと開きはありますが、いずれもがさきの15年戦争中に生まれ育ち、日本国憲法の下で学び、法律家として今日迄歩んできました。日本国憲法が制定されて以降、憲法9条をめぐり幾多の論争がありましたが、政府の解釈として、集団的自衛権は認めないとする見解がとられ、長年それがわが国の確固とした指針とされてきました。私達は、憲法改正手続によってその考えが変更されることはあったとしても、内閣の解釈によってそれが覆されるということは夢想だにしなかったことでした。

 ところが、安倍内閣は憲法9条の解釈として集団的自衛権の行使を容認し、それに基づき安保関連法案を今国会に提出するに至りました。憲法によって縛られている内閣が、その縛りを自ら破ろうとする立憲主義と平和主義否定の暴挙に出たのです。この安倍内閣の暴挙は日本国憲法の根本を覆すものであり、政府と国民の在り方を根底から改変する、大変な事態です。私達は法律家として、このような暴挙を許すことは到底できません。

 安保関連法案の内容、特に要件の文言があいまいで、いかようにも解釈できるものが多すぎる上に、これ迄の法案審議では、安倍首相や中谷防衛相の説明が簡単に修正されることが繰り返されるという異常な状態となっています。答弁に窮すると、安倍首相らは、要件該当性の判断は「総合的判断」であると述べて、それ以上の具体的な説明を拒否しています。しかし、法律の文言の内包と外延を明確にすることが法の解釈であり、法の適用範囲を明らかにすることが、法案を提出した内閣の長たる首相の最重要の任務ですが、安倍首相の説明は、このような法文の内容について、具体的に説明せず、法律の内容について誠実に説明しようとする姿勢を欠いた傲慢極まるもので、首相の任務を果たしているとはとても評せません。戦争に巻き込まれることは絶対にないとか、専守防衛の原則が基本方針であることについていささかの変更もない、などと強調されても、その肝心の根拠が具体的かつ丁寧に述べられていないので、強調が逆に説得力の乏しさを際立たせることになってしまうのです。このように、具体的な説明ができないのは、法案自体があいまいなため、説明をしようとすると随所で矛盾ないしは破綻をきたしてしまうからで、このことは、集団的自衛権を根拠づける正当な事由が存在しないことを如実に示しているものといえましょう。このような安倍首相の不安定で一方的で内容の空虚な説明を聞いて、国民は本法案に対する不安と不信をつのらせていることを、安倍内閣と与党は真摯に受けとめるべきです。首相の「総合的判断」という胸先三寸で自衛隊を海外に出すことができるという解釈が許されていいのか。国民の怒りは、安倍首相にこのような勝手な判断をされてはたまらないというところにもあることを理解すべきです。

 法案の持つ問題点について、これ以上くどくどと申し上げることは控えますが、次のことについて、特に申し上げておきたいと思います。

 第1は、自民党国会議員諸賢に対するものです。自民党は、これ迄、国政の重要な諸問題について、党内で活発な議論を重ね、その中で左右のバランスをとってきたという自負を、同党の多くの議員の方々から聞いてきました。意見、見識の多様性、それを許容する柔軟性、包容力が持ち味であると誇ってきたのではないでしょうか。私達の中のある者は、故前尾繁三郎氏をはじめ、幾多の秀れたバランス感覚と指導力を持った議員の謦咳に接してきました。そうした過去の自民党の姿を知る者にとって、党内の意見統制、国民に対する説明中止、首相の応援団や側近の跋扈の様子には強い危惧感を覚えます。本法案に対して、自民党国会議員の誰一人疑問や異論を持たないのでしょうか。日本国憲法の原理を覆し、戦後の安全保障政策の大転換を図る法案について、そのようなことは、私達にとって信じ難い思いがします。異論を唱える勇気のある議員は一人もいないのでしょうか。よもや、選挙において党中央の公認が得られない可能性があるから異論を控えるということはないでしょうが、見事なまでの反対意見の欠如は、党内民主主義が機能不全に陥っていると思えてなりません。安倍首相の父方の祖父故安倍寛氏は、先の大戦中、東條内閣の下で行われた翼賛選挙において、翼賛会の非推薦議員として立候補し当選しましたが、敢然と時流に抗し、勇気と良識を示したことを、今の自民党国会議員も学んで頂きたいと思います。公認を得られるか否か、という目先の利益にとらわれているような国会議員に対しては、次の選挙において、国民の怒りが向けられることは必定です。子どもや孫の世代のために、勇気を奮って本法案に反対して頂くことを切望いたします。

 第2は公明党に対するものです。本法案についての安倍首相や中谷防衛相、さらには最近の磯崎首相補佐官の説明や発言を見ると、公明党集団的自衛権にブレーキをかけたいという思いは完全に裏切られています。公明党の反対によって封印されたはずの砂川事件最高裁判決の片言隻句が、堂々と、安倍首相や高村自民党副総裁から、集団的自衛権容認の論拠として口にされています。私達法律家の目からすれば到底論拠となり得ない砂川事件最高裁判決を公明党との折衝の中で封印したことをきれいに忘れたかのように安倍首相らが語っていることは、誠に異様な光景といわねばなりません。本法案は、首相の胸先三寸の判断で海外での戦争を可能にするものとなっており、歯止めとなるはずの仕掛けは全く役に立たなくなっていることが明白になってきています。公明党国会議員の皆様。貴党は「平和の党」を党是としていますが、平和の党が戦争を可能にする法案を推進することは、平和の党の自己否定であると思えてなりません。安倍内閣の閣議決定、その後の推移を第三者の目から見ますと、公明党自民党に翻弄され、自民党のために利用されているとしか見えません。もし公明党に平和の党としての誇りがあるならば、安部首相らの説明の中で、異議を唱えるべきところは、異議を唱え、違憲な法案に対する真に有効な歯止めとなる修正案を提言するか、あるいは平和の党の誇りにかけて廃案を主張するべきではないでしょうか。参議院で法案に賛成しないことはもちろん、もし60日ルールによって衆議院で再議決がされる場合には、本法案に賛成しないことによって再議決を阻止することが、平和の党の最低限の責務ではないでしょうか。それらのことができなければ、平和の党の看板は即刻下ろして下さい。次の国政選挙では、厳しい国民の審判が下されることのないよう、勇気と良識をもって行動されることを切望します。

 最後に、京都府下選出の全ての国会議員の皆様に、本法案を廃案とするための勇気ある行動をとって頂くことを、今一度訴えます。

 私達は、いずれもが老境の域にあり、残された社会的活動の期間も決して長くありませんが、次の世代に対して、海外での戦争を担わせることは絶対させたくないとの強い思いを持っています。立憲主義、平和主義という日本国憲法の根本原理が破壊されようとするのを、法律家として、何もしないで看過するわけにはいきません。このような私達の思いを皆様にお伝えし、筆を擱きます。暑い日が続きます。どうぞご自愛下さいますようにお祈り申し上げます。

                       敬白