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【京都の弁護士グループ】安保法制に異議あり!怒れる女子たちの法律意見書(※男子も可)

怒れる京都の女性弁護士たち(男性弁護士も可)が安保法制の問題点について意見するブログです。

イラク派兵違憲判決(名古屋高裁判決)のご紹介

 先月30日の参議院の委員会で、山本太郎議員が、安倍首相に対する質問の中で、イラクへの自衛隊派兵差し止め訴訟の、名古屋高等裁判所判決を引用していました。

航空自衛隊イラクでの空輸活動については、2008年の名古屋高裁で、憲法違反だという判決が確定している」
「政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲としても、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。人道支援と言われるものの実態は結局米軍との武力行使一体化であったと、それがはっきりと司法によって判断された。」 

  この質問には、安倍首相ではなく、中谷防衛相が、「違憲の確認及び差し止めを求める訴えについては不適法なものとして却下された。また損害賠償請求は法的根拠がないとして棄却されており、国側全面勝訴の判決だった」と答えました。

 (質疑応答の全文反訳はこちら↓)

blogos.com

  この答弁だと、画期的な判決の価値がわからないので、紹介させていただきます

 

訴訟の概要

 この事件は、全国で5000人超の原告が、国を相手どって、全国の11の裁判所に、イラク特別措置法にもとづいて自衛隊イラクへ派遣することが、憲法9条などに違反するとして訴えを提起した事件です。
  訴えの内容は、① 派遣が違憲であることの確認、② 派遣の差し止め、③ 精神的苦痛に対する慰謝料(ひとり1万円)の請求、でした。
 山本議員が引用したのは、そのうち、名古屋高裁が下した判決です。

 判決の主文は、防衛相の答弁のとおり、違憲確認と差止め請求は却下、慰謝料請求は棄却でしたが、これらの結論は、抽象的違憲審査権を認めない従来の判例行政事件訴訟の枠組みからすれば、原告や弁護団も予想ずみの結論だったことでしょう。

 この判決が、大きな反響を呼んだのは、自衛隊イラク派兵について、詳細な事実認定をしたうえ、はっきりと、憲法9条1項に違反していると判示したからです。
 つまり、入り口で門前払いをして済ませるのではなく、イラクにおいて航空自衛隊が行っている空輸活動は、武力行使を禁止したイラク特別措置法に違反する、活動地域を非戦闘地域に限定した同法にも、憲法9条1項にも違反するとはっきりと示したからです。

 

判決内容

 判決の内容をピックアップします(判決の意味を違えない範囲でわかりやすくしました)。

① 2003年3月、イラクフセイン政権が大量破壊兵器を保有しながら無条件査察に応じないとして、国連の決議がないのに、米国軍と英国軍を中心とする有志連合軍がイラクへの攻撃を開始した。

② しかし、攻撃の大義名分とされたフセイン政権の大量破壊兵器は発見されていないし、存在しなかったとするのが国際的理解である。ブッシュ大統領自身も情報が誤っていたことを認めている。

③ 攻撃開始後まもなく、フセイン政権が崩壊し、2003年5月、ブッシュ大統領が、イラクにおける主要な戦闘の終結を宣言。その後、国連安保理事会決議で、米国を中心とする連合暫定当局がイラクの統治を引き継いだ。 

④ 2004年6月、イラク暫定政権が発足。現在のイラクにおいては、多国籍軍と、実質的に国に準ずる組織と認められる武装勢力との間で、一国国内の治安問題にとどまらず、国際的な武力紛争が行われているといえる。

⑤ とりわけ、首都バグダッドは、2007年に入ってからも、米軍がシーア派とスンニ派の両武装勢力を標的に多数回の掃討作戦を展開し、これに武装勢力が対抗し、双方と一般市民に多数の犠牲者を続出させている地域であるから、イラク特措法にいう「戦闘地域」に該当すると認められる。

⑥ その詳細は、政府が国会にも国民にも開示しないので不明であるが、

・ 航空自衛隊は、2006年7月ころ以降バグダッド空港への空輸活動を行い、現在まで、アメリカが空挺隊員輸送用に開発した輸送機3機により、週4~5回、定期的に武装した多国籍軍の兵員を輸送している、

・ これは米国の要請でなされているもので、米軍はこの輸送時期と重なる2006年8月ころバグダッドに米国兵を増派し、その後、バグダッドにおける掃討作戦を一層強化している。空輸活動がカタールのアメリカ軍や英国軍と機体のやりくりを調整し飛行計画を立ててなされている。

・ 2006年7月以後も同様に米軍等との調整の上で空輸活動がなされているものと推認され、輸送機には、地対空ミサイル攻撃を防ぐための装備があり、事前訓練を経た上で、実際にバグダッド空港での離着陸時に使用されている、バグダッド空港は米軍が固く守備しているものの、現実的な攻撃の危険性があると防衛大臣が答弁していること、航空自衛隊多国籍軍の武装兵員を輸送に際し、バグダッドでの掃討作戦当の武装行為に関与しない者に限定して輸送している形跡はない。

・ これらを総合すれば、航空自衛隊の空輸活動は、それが主としてイラク特措法上の安全確保支援活動の名目で行われ、それ自体は武力の行使に該当しないとしても、多国籍軍との密接な連携の下で、多国籍軍武装勢力との間で戦闘行為がなされている地域と地理的に近接した場所において、対武装勢力の戦闘要員を含むと推認される多国籍軍の武装兵員を定期的にかつ確実に輸送しているものといえ、現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であることを考慮すれば、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているものといえる。

・ したがって、このような航空自衛隊の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員をバグダッドに空輸するものについては、2001年2月の内閣法制局長官の答弁に照らし、他国による武装行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるといえる。

・ よって、現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反しつつ、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいると認められる。 

 

 この判決は、判例時報2056号74頁、判例タイムズ1313号137頁のほか、「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」(http://www.haheisashidome.jp/)が紹介していて、下記のリンク先から閲覧することができます(PDF形式です。)。

 名古屋高判平成20年4月17日 判決全文

 

 また、弁護団の方が、「『自衛隊イラク派兵差し止め訴訟』判決文を読む」という本も出しておられます(印税はイラクの子どものために使われるそうです)。

www.amazon.co.jp

 以上ご紹介でした。

(弁護士 山下信子)

 

※2015年8月5日FBに投稿したものを、ブログ用に編集しました。 

 

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